46.
人間的な、余りに人間的なものは大抵は確かに動物的である。
– 芥川龍之介 -7108
47.
民衆の愚を発見するのは必ずしも誇るに足ることではない。が、我々自身も亦民衆であることを発見するのはともかくも誇るに足ることである。
– 芥川龍之介 -7087
48.
道徳は常に古着である。
– 芥川龍之介 -7092
49.
わたしは良心を持っていない。わたしの持っているのは神経ばかりである。
– 芥川龍之介 -7134
50.
われわれを恋愛から救うものは、理性よりもむしろ多忙である。
– 芥川龍之介 -7133
51.
他を嘲(あざけ)るものは同時にまた他に嘲られることを恐れるものである。
– 芥川龍之介 -7099
52.
自由は山巓の空気に似ている。どちらも弱い者には堪えることは出来ない。
– 芥川龍之介 -7113
53.
打ちおろすハンマーのリズムを聞け。あのリズムが在する限り、芸術は永遠に滅びないであろう。
– 芥川龍之介 -7097
54.
道徳の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。道徳の与えたる損害は完全なる良心の麻痺である。
– 芥川龍之介 -7093
55.
わたしは二三の友だちにはたとい真実を言わないにもせよ、嘘をついたことは一度もなかった。彼等もまた嘘をつかなかったら。
– 芥川龍之介 -7135
56.
我々はあらゆる女人の中に多少のマリアを感じるであろう。同時に又あらゆる男子の中にも ?。いや、我々は炉に燃える火や畠の野菜や素焼きの瓶や厳畳に出来た腰かけの中にも多少のマリアを感じるであろう。
– 芥川龍之介 -7128