76.
小説家のほうが読者より人生をよく知っていて、人に道標を与えることができる、などというのも完全な迷信です。小説家自身が人生にアップアップしているのであって、それから木片につかまって、一息ついている姿が、すなわち彼の小説を書いている姿です。
– 三島由紀夫 -7752
77.
人生には濃い薄い、多い少ない、ということはありません。誰にも一ぺんコッキリの人生しかないのです。
– 三島由紀夫 -7744
78.
無秩序が文学に愛されるのは、文学そのものが秩序の化身だからだ。
– 三島由紀夫 -7718
79.
裏切りは、かならずしも悪人と善人のあひだでおこるとはかぎらない
– 三島由紀夫 -7714
80.
何のために生きてゐるかわからないから生きてゐられるんだわ。
– 三島由紀夫 -7780
81.
ヒットラーは政治的天才であつたが、英雄ではなかつた。英雄といふものに必要な、爽やかさ、晴れやかさが、彼には徹底的に欠けてゐた。ヒットラーは、二十世紀そのもののやうに暗い。
– 三島由紀夫 -7786
82.
何か、極く小さな、どんなありきたりな希望でもよい。それがなくては、人は明日のはうへ生き延びることができない
– 三島由紀夫 -7781
83.
軽蔑とは、女の男に対する永遠の批評である。
– 三島由紀夫 -7776
84.
嫉妬こそ生きる力だ
– 三島由紀夫 -7762
85.
何を守ればいいんだと。ぼくはね、結局文化だと思うんだ
– 三島由紀夫 -7779
86.
小説家にとっては今日書く一行が、テメエの全身的表現だ。明日の朝、自分は死ぬかもしれない。その覚悟なくして、どうして今日書く一行に力がこもるかね。その一行に、自分の中の集合的無意識に連綿と続いてきた“文化”が、体を通して現れ、定着する。その一行に自分が“成就”する。それが“創造”というものの、本当の意味だよ。未来のための創造なんて、絶対に嘘だ。
– 三島由紀夫 -7753
87.
生まれて来て何を最初に教わるって、それは「諦める」ことよ。
– 三島由紀夫 -7741
88.
賭けとは全身全霊の行為である。百万円持っていた人間が、百万円を賭け切るときにしか、賭けの真価はあらわれない。
– 三島由紀夫 -7729
89.
現状維持というのは、つねに醜悪な思想であり、また、現状破壊というのは、つねに飢え渇いた貧しい思想である。
– 三島由紀夫 -7772