16.
文を作るのに欠くべからざるものは、何よりも創作的情熱である。
– 芥川龍之介 -7090
17.
女は常に好人物を夫に持ちたがるものではない。しかし男は好人物を常に友だちに持ちたがるものである。
– 芥川龍之介 -7111
18.
僕等の性格は不思議にもたいてい頸(くび)すじに現れている。
– 芥川龍之介 -7088
19.
どうか英雄とならぬように ?英雄の志を起さぬように力のないわたしをお守りくださいまし。
– 芥川龍之介 -7137
20.
強者は道徳を蹂躙するであろう。弱者はまた道徳に愛撫されるであろう。道徳の迫害を受けるものは、常に強弱の中間者である。
– 芥川龍之介 -7123
21.
天才の悲劇は「小ぢんまりした、居心地のよい名声」を与えられることである。
– 芥川龍之介 -7094
22.
僕は芸術的良心を始め、どういう良心も持っていない。僕の持っているのは神経だけである。
– 芥川龍之介 -7089
23.
人生は地獄よりも地獄的である。
– 芥川龍之介 -7104
24.
忍従はロマンティックな卑屈である。
– 芥川龍之介 -7091
25.
人生の競技場に踏みとどまりたいと思ふものは、創痍を恐れずに闘はなければならぬ。
– 芥川龍之介 -7107
26.
古来政治的天才とは民衆の意思を彼自身の意思とするもののように思われていた。が、これは正反対であろう。むしろ政治的天才とは彼自身の意思を民衆の意思とするもののことをいうのである。
– 芥川龍之介 -7120
27.
幸福とは幸福を問題にしない時をいう。
– 芥川龍之介 -7118
28.
人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ。
– 芥川龍之介 -7103
29.
自然を愛するのは、自然がわれわれを憎んだり、嫉妬しないためでもない事はない。
– 芥川龍之介 -7114
30.
我々はしたいことの出来るものではない。ただ、出来ることをするものである。
– 芥川龍之介 -7127
31.
阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている。
– 芥川龍之介 -7132
32.
人間は時として、満たされるか満たされないかわからない欲望のために一生を捧げてしまう。その愚を笑う人は、つまるところ、人生に対する路傍の人に過ぎない。
– 芥川龍之介 -7109
33.
恋愛の徴候の一つは彼女に似た顔を発見することに極度に鋭敏になることである。
– 芥川龍之介 -7086
34.
成すことは必ずしも困難ではない。が、欲することは常に困難である。少なくとも成すに足ることを欲するのは。
– 芥川龍之介 -7102
35.
最も賢い処世術は、社会的因襲を軽蔑しながら、しかも社会的因襲と矛盾せぬ生活をすることである。
– 芥川龍之介 -7117
36.
人生の悲劇の第一幕は、親子となったことに始まっている。
– 芥川龍之介 -7106
37.
げに人間の心こそ、無明の闇も異らね、ただ煩悩の火と燃えて、消ゆるばかりぞ命なる。
– 芥川龍之介 -7138
38.
我々を走らせる軌道は、機関車にはわかっていないように我々自身にもわかっていない。この軌道もおそらくはトンネルや鉄橋に通じていることであろう。
– 芥川龍之介 -7126
39.
あなた方のお母さんを慈しみ愛しなさい。でもその母への愛ゆえに、自分の意志を曲げてはいけない。そうすることが後に、あなた方のお母さんを幸せにすることなのだから。
– 芥川龍之介 -7140
40.
人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのはばかばかしい。重大に扱わねば危険である。
– 芥川龍之介 -7105
41.
周囲は醜い。自己も醜い。そしてそれを目のあたりに見て生きるのは苦しい。
– 芥川龍之介 -7112
42.
私は第三者を愛するために夫の目を盗んでいる女には、恋愛を感じないことはない。しかし第三者を愛するために子供を顧みない女には、満身の憎悪を感じている。
– 芥川龍之介 -7116
43.
女人は我々男子には正に人生そのものである。即ち諸悪の根源である。
– 芥川龍之介 -7110
44.
懐疑主義者もひとつの信念の上に、疑うことを疑わぬという信念の上に立つものである。
– 芥川龍之介 -7125
45.
創作は常に冒険である。所詮は人力を尽した後、天命にまかせるより仕方はない。
– 芥川龍之介 -7100